Costume play

















それは、セントラルで姉さんが入院中のことだった。

第五研究所に忍び込んだ後、喧嘩をしたり仲直りしたりしてそろそろ退院かな、という頃。アルは姉の病室の前で、白いものを拾った。

なんだろう?と思ったそれは、看護婦さんが被っている帽子だった。ナース・キャップだ。

めずらしい落し物だな、と思いながら、アルはとりあえず頼まれていたお使いの新聞を姉に渡そうと病室に入った。その後で、ナース・ステーションに届けに行こう。

それとも、落とし主が探しに来るのを待った方がいいのかなあ。もし、おっちょこちょいな新人看護婦さんが落としたのだったら、みんなに知れたら恥かしいかもしれないし、先輩看護婦さんに怒られてしまうかもしれない。

「アル」

そんなことを考えながら入ってきた弟の名前を呼んだ姉は、返事のないことを訝しんで、眉を寄せた。

「アル!」

「わ! なに? 姉さん」

大声で呼ばれてびっくりする弟を見上げて、エドは新聞を受け取りながら大きな手の中に隠れるように握られている白い何かに目を細めた。

「なに持ってんだ? アル」

「ああ、これね、そこに落ちてたんだ」

アルは手を広げて、姉にそれを差し出した。

「落とした人が取りに来るのを待った方がいいかなあ。それとも、ナース・ステーションに届けに行った方がいいと思う?」

鎧の頭部を小さく傾けて相談する弟に答えず、エドはじっと弟の手の中のものを見つめていた。

「姉さん?」

「アル、それちょっと貸してみろ」

ベッドに身体を起こしたまま手を伸ばす姉に、アルは言われるままに赤い十字マークの入ったナース・キャップを差し出した。

片手で受け取って、姉は手の中のそれをじっと見つめている。もしかして、被ってみたいのかな?とアルは思った。看護婦さんは女の子のあこがれるお仕事だもんね。姉さんもちゃんと女の子らしいところがあるんだなあ。よかった。

鏡を探してきてあげようかな、とアルがそんなことを考えていると、エドは弟を見上げて、内緒話をするように手を招いた。アルは素直に従って、ベッドの横に膝をついた。

視線を合わせる高さにかがんだアルの頭に、姉はナース・キャップをそっとのせた。

「可愛いなあー、アルー」

そう言って、姉は弟の可愛らしい姿に満足するように表情を緩めた。

赤い十字マークの入った白いナース・キャップを頭部にのせた鎧は、しばらく言葉を失って、でれでれ微笑む肉親の姿を見上げていた。
















お題「「ナース・コスプレ(鎧)」/04.06.12 ハナ
*そんなわけで鎧バージョン。