アルの小言@











「兄さん、そろそろ眠ったら?」

と、アルが声をかけると、兄は立ち上がって、服を脱ぎ、下着1つで安宿のベッドにもぐりこむ。
床に脱ぎ散らかされた兄の服を、アルは椅子に座ったまま見下ろした。

「脱いだ服は椅子にかけてって、いつも言ってるでしょ。しわになるよ」
「いいよ別に。しわになっても」

ごそごそとベッドの中で体勢をなおし、兄は枕に頭を乗せてもう目を閉じてしまっている。

「いくない」
「明日の朝、やるって」
「それじゃ、意味ないだろ」

「んんー」と答えにならないうなり声を返し、兄は寝返りをうって背中を向けた。
結局、いつもアルが服を拾ってしわにならないように畳んだり、ハンガーにかけたりすることになるのだ。

「いっつも、そうなんだから!」

アルは立ち上がって、床に丸まった服を拾い上げた。

「ボクが女の子だったら、絶対に兄さんみたいな人とは結婚しない!」

兄のだらしなさを非難してそう言うと、「アルが女の子だったら、兄さん以外の人とは結婚させません」と、眠気の欠片もない声がベッドの中からそう答えた。

服に伸ばした手が止まり、アルは思わず兄を振り返った。毛布に隠れた、細い背中を。


なんなの、この人! 偉そうに!


兄さんにそんなこと決める権利ないもん!と、少しずれたところで、アルはぷりぷり怒りながら兄の服のしわを乱暴にぱしぱし叩いた。













04.4.26
以外と亭主関白な兄です。
5月の拍手お礼でした。