コール ミー プリーズ |
きみの声が呼ぶ、それがすき。 頭までかぶったブランケットが作る暗闇が、白く光っていた。容赦なく開け放されたカーテンの向こうは晴天だ。 「兄さん、朝だよ、起きて」 機嫌良さそうな声が、エドを呼んだ。天気のいい日は、アルはご機嫌だ。がさごそと荷支度をしながら、鼻歌なんか歌っている。エドは口元を上げ、まだ眠たい目を笑う形に閉じて、ブランケットの端を頭の上でぎゅっと握った。 「兄さーん」 鼻歌がやんで、少し大きくなった声がエドを呼ぶ。 「兄さん、起きて顔あらって」 口調が強くなる。 「もう……。だから早く寝なよって、いつも言ってるのに」 あきれるのと拗ねるのと半々ぐらいの声。 「兄さん、起きて」 ガシャンガシャンと足音。硬い手がブランケット越しに肩を掴んで、揺さぶる。 「兄さん」 すぐ近くで聞こえる声。ため息。 「ねえ、今日の朝ご飯なにかなあ? 兄さんの好きなパンケーキかも」 子供の機嫌をとるように宥めすかす声。エドはしのび笑いを押し殺した。けれど間近に顔を寄せていた相手に、震える気配は伝わった。 「目が覚めてるなら、さっさと起きてよ、もう!」 拗ねたように文句を言う弟に、エドは笑って背中を丸め、ブランケットにくるまった。ぐいと布の端がひっぱられるのに、負けじと巻き込む腕に力を込める。 「お、き、ろー!」 だってしょうがないだろう。 俺のことを呼ぶお前の声が好きなんだから。 |
04.6.2 朝からいちゃいちゃ。6月の拍手お礼でした。 |