鋼で夏のお題 「夏休み」 
エドアルだけど大佐とエドでハガレン学園です
















教科会議ですっかり遅くなった帰り道、コンビニの自動ドアを一歩入って、ロイ・マスタング教諭(担当教科:科学)は立ち止まった。

入口横の雑誌売り場におもいきりしゃがみこんで雑誌を座り読みしている学生の制服は、ロイの勤務先のものだった。ああ、面倒くさい。

私服なら気づかぬふりができるものを、制服姿とあっては指導しないわけにはいかないではないか。

仕事を職場以外に持ち込みたくないロイとしては、甚だ迷惑なことだった。
さらに、金髪の三つ編みといい、小学生並の背の低さといい、三白眼まで一歩手前の目付きの悪さといい、見間違いようのないその生徒をロイはよく知っていた。

「鋼の、せめて立って読みなさい」

「つっこみどころが違うだろ、それ」

つっこみじゃなくて、指導なんだが。生徒指導など、はなからやる気のないロイは、仕事はすんだとばかりに通り過ぎようとして、ふと、熱心に座り読みを続ける生徒が何を読んでいるのか気になった。

足を止め、金髪の頭越しに覗き込むと、どうやら青年向けの情報誌らしい。開いたページのキャプチャーは、「今年の夏休みこそ、脱友達!」。

「なんだ、鋼のでも、ちゃんと女子生徒に興味があったんだな」

口を開けば、弟、弟とうるさいエドワードにも、年相応の異性への興味があるということだろう。そういえば、他のクラスに幼なじみの少女がいたはずだ。

しかし、エドワードはさらりと答えた。

「こーゆうのって、なんで、友達から恋人になる方法は載ってんのに、兄弟からってのは載ってねえのかな」


お前だけだ、そんな本欲しがるのは。


はあー、使えねー、と。今年の夏休みこそどうにかなる気らしい兄の方は盛大にため息をついた。それでも雑誌を手放さないのは、応用できる情報がないか探しているらしい。


職場を離れてまで仕事をするのは嫌なのだが。


今度、エルリックの弟の方に、夏休み中は兄の行動に気をつけるように指導しておこうと、コンビニ弁当の夕食を手に、ロイは思った。

ロイが温めてもらった弁当の入った袋を提げてドアを出てゆく時にも、エドワードは真剣な横顔で雑誌を睨んでいた。




















04.8.1

今ごろ、制服ネタですみません…。
コンビニ弁当を温めてもらって、袋を提げて帰って、家でコンビニ弁当を食べる大佐にうっかりときめいてます。