エドロイTEXT10 |
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承認印をもらう書類をぺらぺらと揺らしながら開いたドアをノックすると、珍しく仕事をしていた相手が顔を上げた。 「やあ、鋼の」 「サイン」 執務室を縦断して、広げていた資料の上に書類を1枚乗せると、「行儀よく待ちたまえ」と、たしなめるそぶりもない声がそう言った。 エドは書類をそのままに、執務机の前のソファに音をたてて腰を下ろした。行儀悪く投げ出した足はテーブルの上に。 「弟は一緒じゃないのか?」 「外で中尉ん家の犬と遊んでる」 「犬に負けたか」 「負けてねえよ」 弟が子犬をかまいたいそぶりだったから、遊んでいたらいいとエドが言ったのだ。 笑うような気配を感じたが、エドは自分のつま先から視線を逸らさなかった。 「しばらく滞在するのかね」 「そいつにサインもらったら、すぐに出る」 「相変わらず、お茶に付き合う時間もないというわけか」 「時間があったって、野郎の茶なんかつきあわねえよ」 書類の上をペンの走る音が、一瞬の間を埋めた。 「ところで鋼の」 「うそだろ」 間髪いれずに返して執務机に顔を向けると、俯いたまま視線だけ上げてエドを見る目が細く笑った。 白い手が上がって、サインの済んだ書類を差し出す。エドはソファから立ち上がって、白い紙を受け取った。長居は無用とばかりに、背を向けて。 「鋼の。愛してるよ」 と、笑みを含んで試す声。 出てゆきかけた足をドアの前で止め、エドは開いたままのドアノブに手をかけて肩越しに振り返った。 「俺は、大っ嫌い」 笑うなら笑えこの大うそつき。 |
04.4.1 エイプリル・フールうそつき合戦。 |