大佐30 TEXT
6 迎え撃つ
















尊敬も好意も、欠片も持ち得ない相手に控えめな笑顔を浮かべ、謙遜し、褒めそやし、頭を下げる。

そんなことばかり繰り返して1日が終ってしまった。挨拶回りを済ませ、新しい執務室へと引き返し、座りなれない椅子に腰を下ろすと、あたたかい湯気の立ち上るコップが目の前に置かれた。

大佐は白いカップを手にとって、口に運んだ。紅茶の温度は、ぬるすぎることのない飲みやすさだった。まるで敵地から生還し、自陣に戻ってきたような安堵がつま先まで降りてゆく。

「女性に生まれていたら、天職は娼婦だったな」と、膿んだ心に浮かんだ言葉は小さく呟く声になった。

「女性に生まれなくとも、充分つとまると思いますが」

静かな声が、いつもどおりに冷静に答えて返す。

「やあ、褒められた」

「冗談です」

真面目な声で訂正する部下に、「中尉の冗談はつまらないなあ」と言って。大佐は顔をくしゃりとさせ、子供みたいに楽しそうに笑った。












04.4.2
大佐になったばかりのロイロイと中尉になったばかりのリザさん。味方はまだリザさんしかいなかった頃の二人みたいな感じで。一緒に戦う仲間として、リザさんは大佐にとってとても心強い存在だと思います。
あ!ヒューズさん!…は、味方と言っても別働隊だからとゆーことで。