エドアル 10 TEXT
うたた寝




















辺境の列車は、時刻通りには発着しない。
もう1時間は遅れている列車を待ちながら、何度も瞬きを繰り返す兄の目が細くなる。アルはホームのベンチに座ったまま、見上げていた空から傍らの兄へと視線を下ろした。

「兄さん、寝てていいよ。列車が見えたら、起こしてあげる」

「んー」と、生返事に続いて、「そうするかな」と声が眠そうに答えた。トランクに寄りかかるように頭の下に腕を入れて、兄は目を閉じた。

移動の列車の中やちょっとした待ち時間に、アルの兄は居眠りをすることが多かった。夜眠らないアルにつきあって、遅くまで起きているせいだ。夜の孤独から少しでもアルを遠ざけ、昇る太陽に預けるように、つかの間眠る兄。

ちちち、と、さえずる声が頭上に聞こえて、アルは日陰に眠る兄の顔から視線を上げた。
故郷では見かけない、綺麗な青い色をした鳥が滑空して、トランクの縁に止まろうとする。アルはそっと手を出して、小さな足を自分の指へと止まらせた。

「ごめんね。起こさないで」

小さく謝って、アルは腕を高く伸ばした。
空に戻って行くように、青い羽が羽ばたいて小さくなって行った。
























羽ばたきの気配を頭の上に感じて薄く目を開けると、「ごめんね、起こさないで」と、鳥の言葉でささやくように語りかける弟の声が聞こえた。

ちち、と応える鳴き声と、遠くなってゆく羽音。

そういえば、この辺には故郷の村では見たことのない青い鳥がいたと、エドはうつらうつらと漂う意識の間に間に思った。青い鳥は、確か幸福を呼ぶのではなかったか。それとも、幸福へと人を導くのだっただろうか。

なんにせよ、小さな動物を好きな弟が、どうやら自分を起こさないために追い払ったらしいことを考えると。

今、目を覚ますわけにはいかないようだと思いながら、エドは再び目を閉じた。




















04.4.28
新OPが好きすぎて、あの寝てる兄とアルのカット1つ1つでSSを書きたい…!
と、ちょっと本気で思っているぐらい好きです。新OP。鳥…、青かった?ですよね?