閑話休題 















「ったく、なんなんだよ、あいつらはよー」

宿に戻る道すがらも、部屋に戻ってからも、ぶつぶつ言い続ける兄の眉間に深い皺が寄っていた。気が短く沸点の低い兄は、しょっちゅうそんな風に顔をしかめている。

アルは手を伸ばして、ベッドの上にどさりと腰を下ろした兄の眉間を指でぐいぐいと押した。

「なにすんだよ、アル」

さらに眉根を寄せて、兄はアルを見上げた。うるさそうな表情をしてはいるが、アルの手を払うことはない。

「兄さんも、お友達を見習って、笑顔を心がけたら?」

でないと眉間の皺が元に戻らなくなってしまいそうだ。

「誰が誰のともだちかーっ!!」

両腕を上げて怒る兄に、アルの手は払われてしまった。また、眉間に皺だ。あーあ。




にこにこ笑えとまでは言わないけれど、もうすこし優しい顔をしてくれたら、兄さんが優しい人だってわかってもらえるのになあ。




人からどう見られているかとか、もうちょっと気にしてくれたら、余計なトラブルもケンカ沙汰も減るんじゃないかなあと思いながら。昼間の出来事を思い出してきーきー言う兄に、アルは「はいはい、そうだねえ」と適当な相槌をうった。
















2004.11.30

8巻リン様の目つき悪いから発言ネタです。